君に愛されて痛かった 1巻は、かなえの惨めさと執着が最初からむき出しです。一花たちのグループに残るために援助交際を続けている時点で、もう普通の学園ものではありません。かなえ自身もそれがまともではないと分かっているのに、そこを切れば自分の居場所まで消えるからやめられない。序列から落ちないために体まで差し出している現実が真正面から出てくるので、かなりしんどい始まりでした。
あらすじ
ごく普通の女子高生・かなえ。クラスの人気者である一花とつるむために援助交際を続ける彼女だったが、ある出来事をきっかけに日常は大きく崩れていく。
アマゾンから抜粋
1巻でまず苦しいのは、かなえの毎日が最初から壊れたバランスの上にあることです。彼女が守りたいのは正しさではなく、一花たちの輪の中に残ることです。だから援助交際も切れないし、傷ついても引き返せない。普通ならそこで目を覚ましそうな場面でも、かなえは自分を止めるより先に、今の立場をつなぐほうへ動いてしまう。この時点でもうかなり危ないです。

かなえの承認欲求がかなりきつい
かなえを見ていてきついのは、切られた瞬間に自分が空っぽになるのを本気で怖がっているところです。一花の近くにいるためなら、自分が雑に扱われることも受け入れるし、自分で自分を安くしてしまう。その姿はかわいそうだけでは済みません。自己評価が低いという言葉では足りず、他人に値段をつけられているのに、その関係から降りられない感じがかなり生々しいです。

しかも、かなえはただ追い詰められて終わる子ではありません。自分が傷ついたときに黙って沈むのではなく、相手も道連れにしてひっくり返したくなる危うさを最初から持っています。ここがこの作品の嫌なところで、かなえを完全な被害者としては読めない。傷つけられる側なのに、同時に誰かを引きずり下ろす側にもなれる。そのねじれ方がかなり露骨です。
一花との関係が友情ではなく支配に近い
かなえにとって一花は、自分の価値を決める側の人です。表面上は仲のいいグループでも、実際には空気を読めるか、使えるか、切り捨てられる側に回らないかで立場が決まっているように見える。1巻ではそのいやらしい上下関係がずっと底に流れていて、距離が近いぶん逃げ場もない関係になっています。一花に気に入られている間だけ席をもらえている感じがかなり濃いです。

かなえが一花へ向ける感情も、普通の友情ではありません。近くにいたい、認められたい、でも見下されたくないし、奪い返したい。その全部が混ざっているから、こじれたときに報復へ向かうのも早い。仲良しグループのもめごととして見るより、誰が上で誰が下かがむき出しになる場面として読むほうがしっくりきました。一花への執着には憧れだけでなく、嫉妬と恨みがかなりべったり貼りついています。
寛は救いに見えて、別の依存先でもある
寛の存在は、かなえにとって逃げ込める場所に見えます。学校の中で息ができないかなえにとって、自分を肯定してくれる相手が現れるのは大きいです。ただ、1巻の時点では、かなえが寄りかかる先が一つ増えただけにも見えました。かなえは自分を立て直すより、誰かにすがってその場をやり過ごそうとするので、読んでいて安心感はあまりありません。

この作品は、優しい言葉が出てきたからひと安心、という流れにはなりません。かなえ自身が不安定なので、誰かに受け止められても、そのまま落ち着く感じがしない。読み終わったあとも助かったという気分にはならず、ここからもっと面倒なことになるという予感のほうが残ります。かなえが誰かにすがるほど、状況がさらにまずい方向へ進みそうなのが嫌でした。
1巻は地獄の幕開けとして十分強烈
1巻は、かなえの危うさと、人間関係の腐った部分を順番に見せていく巻です。そのぶんテンポ重視で読みたい人には向かないかもしれませんが、人の情けなさや執着をじっくり描く漫画が好きならかなり合うと思います。気持ちいい場面は少ないのに、かなえが次にどこまでやらかすのか気になって手が止まりませんでした。
とくに印象に残ったのは、かなえが崩れていく理由を外側の出来事だけで片づけていないところです。もともと抱えていた空虚さや、他人の評価に自分の価値を預けてしまう危うさがあるから、ひとつのきっかけで一気に形が崩れる。事件で別人になるのではなく、前から入っていたひびが表に出る描き方なので、そのあたりが1巻の読後感をかなり重くしています。援助交際も学校内の序列もショック要員として置かれているだけではなく、かなえの壊れ方そのものに直結していました。
まとめると、君に愛されて痛かった 1巻は、かなえの承認欲求、一花とのゆがんだ関係、寛という逃げ場の危うさを通して、かなり湿った人間関係を描く始まりでした。性的な搾取、学校内の序列、依存、嫉妬、報復がひとつながりで転がっていくので、読後感はかなり悪いです。でも、その気持ち悪さや後味の悪さまで含めてこの作品の持ち味だと思います。きれいな青春ものを期待して読むとかなり外しますが、えげつない人間関係の漫画として読むと1巻の嫌な迫力がちゃんと伝わってきます。
