雨夜の月4巻では、綾乃の背景に踏み込む描写が増え、これまで断片的に示されてきたすれ違いがどのように積み重なっていったのかが具体的に描かれていました。綾乃の家庭での様子や日常の負担は、状況がはっきり伝わる描かれ方をしていて、彼女が置かれていた環境がどのようなものだったのかを読み手が理解できるような構成になっています。
また、奏音との関係の変化がどのタイミングで起こったのかが、これまでより明確に示されています。学校での些細な一言から始まり、家での出来事、保育園での会話、そして周囲から向けられた言葉が綾乃の中で重なっていく様子が順番に描かれていました。4巻では、綾乃自身が無理をしているわけではなく、環境によって余裕がなくなっていく過程が示されています。
一方、これまでただ嫌味を言う側として描かれていた富田が、4巻では別の角度から登場し始めます。合唱コンクールに関わるシーンが中心で、これまでと違う描かれ方が増え、物語に新しい動きが生まれていました。
雨夜の月4巻で明かされる綾乃の家庭環境と負担
雨夜の月4巻では、綾乃の家庭での様子が具体的に描かれ、これまで触れられていなかった背景が明らかになります。綾乃は母子家庭で、弟や妹の世話を日常的に行っていることが作中ではっきり示されています。家に帰るとすぐに弟妹がお腹すいたと声を上げ、慌ただしく対応する綾乃の姿は、生活における負担の大きさをそのまま表していました。
さらに、弟妹の声に対して隣家から壁を叩かれる描写があり、過去には騒音として通報されたこともあると語られています。この一言だけでも、綾乃の置かれた環境が家庭の中だけではなく近隣との関係にも気を配らざるを得ない状況であることが分かります。また、保育園に弟を迎えに行く場面では、弟がぐずってしまったと言われ、家庭でのストレスに触れられるシーンがあります。保育園の職員から、家で気にかけてあげてほしいと言われる描写もあり、綾乃に向けられる言葉の重さが積み重なっていく様子が描かれていました。
その帰り道、同世代の高校生が楽しそうに歩いている姿が描かれます。この描写は短いものですが、綾乃が置かれている環境と、周囲の同年代との違いが印象として浮かび上がる場面になっています。この直前までに向けられた言葉や、日常の負担が綾乃の中で重なり、同級生男子の咲希に対する守ってあげたいという台詞、もっと気にかけてあげてという言葉を思い出す流れが描かれています。

翌日、綾乃は奏音を迎えに行けません。当たり前の行動ができないほど疲れていたという事実だけが淡々と示されます。その後、奏音からどうして迎えに来なかったのかと問われ、綾乃がとっさに嫌味のような言葉を返してしまった場面も描かれています。綾乃自身がその言葉を意図して言ったのかどうかは説明されていませんが、言葉が奏音に対して強く響いたことだけは、作中の流れから明確です。
この後綾乃は奏音との距離を取るようになります。しかし奏音が綾乃の事情を知った際、歩み寄ろうとする場面が描かれ、そこで綾乃が障害だから特別扱いを受けて良いよねという言葉を口にしてしまう出来事が描かれています。どちらの立場にも説明はありませんが、実際に綾乃の口から語られたのはこの内容で、4巻の重要な台詞のひとつとなっています。

4巻では、綾乃がどのような環境で日常を過ごしていたのか、何が重なってすれ違いが生まれたのかといった要素が、説明ではなく具体的な出来事の積み重ねとして描かれていました。
下手に出た奏音に対して言ってはいけない台詞と思いますが、環境が想像以上に気の毒な状況ではありました。
咲希との会話からも根がとても良い性格なのはわかるので奏音との和解もありそうですね。
嫌味を言っていたグループの富田が物語に入り始める
雨夜の月4巻では、これまで奏音に対して嫌味を言う側として描かれてきた富田が、物語の中でより明確に扱われるようになります。
4巻では、合唱コンクールの指揮者に富田が立候補する描写があります。この時の富田の表情は悪意を含んだものとして描かれており、これまでの態度と変わらない印象が続いています。

奏音に対しては依然として攻撃的ですが、咲希と会話する場面になると、話し方ややり取りは少し柔らかくなり、印象が異なる描かれ方がされていました。富田がどのような人物なのかは説明されませんが、作中の描写だけを見ると、奏音に強い悪意を持っているようです。
また、富田と奏音は過去に関わりがあったらしい描写が示されており、今後につながりそうな雰囲気だけが提示される形になっています。4巻時点では、その回想が現在の富田の行動にどう影響しているのかは語られていません。

後半では、富田がしばらく学校を休むことが明かされます。理由については作中で説明されず、ただ事実として不在が語られます。その後、奏音が代わりに指揮者へ立候補する展開につながっていきます。
まとめ
雨夜の月4巻では、綾乃の背景に踏み込む場面や、これまで周辺人物として描かれていたキャラクターの動きが具体的に示され、物語の方向が少しずつ整理されていく巻になっていました。
また、富田の扱いも4巻で変化がありました。序盤での嫌味な態度に加え、指揮者への立候補、子供時代の短い回想、不在になる展開など、行動だけが示される場面が続き、今後の物語に関わってくる可能性が感じられる扱いになっています。ただし背景や意図については語られず、4巻では事実としての行動だけが提示されています。
総じて、4巻は大きな転換点や劇的な展開というよりも、登場人物の過去や行動が具体的な形で描かれることで、これまでの謎や違和感が少しだけ整理される巻でした。特に綾乃に関しては、言動だけを見ていても分からなかった状況が、生活の断片が積み重なることで明確な輪郭を持ち始めています。今後の物語でどのように扱われていくのか、その前段階が静かに描かれていた印象でした。

