犯罪者から届いた削除要請メールに感じた違和感―名誉毀損と連絡の意味

コラム

ある日、過去に書いたブログ記事(他ブログ)に一通のメールが届きました。
内容は次のようなものでした。

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当該記事の情報は私個人のプライバシー情報に該当します。情報の公開により不利益も生じているので、記事の削除の対応をご検討いただけませんでしょうか。
なお、削除に応じてもらえない場合は、法的措置での対応も検討しております。

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送信者の名前を見た瞬間、驚きました。
それは、以前私が性犯罪のニュースを引用し、自分の意見を書いた記事で名前が出ていた加害者本人だったのです。

事件は、若干ぼかしますが、2021年にバーの店長が体験で入店した女性を泥酔状態にさせたあと、
わいせつ行為を働き、さらに自宅に連れ込んで…といった事件で、当時は1年も経っていない状態でした。

また、テレビでもネットでも名前は普通に出ていた事件です。(じゃないと自分が名前知ってない)

犯罪者から届いた丁寧な圧力

文面だけを見ると、礼儀正しく冷静なお願いのように感じます。
しかし「法的措置」という言葉が入るだけで、受ける印象は大きく変わります。
一見丁寧に見せながら、こちらを萎縮させようとする意図が見えてしまいました。

犯罪を起こした本人が、被害者でも報道機関でもない他人に「名前を出すな」と言ってくる構図。
正直、恐怖よりも強い違和感が残りました。
自らの行為によって社会的に報じられた結果を、あとからプライバシーだと言われても納得しづらいものです。

報道された名前は個人情報なのか

私の記事は、報道機関が出した内容を引用し、自分の所感を添えただけのものでした。
新しい情報を暴いたわけでも、誰かを中傷したわけでもありません。
それでもプライバシー侵害だと言われると、やはり違和感を覚えます。

確かに、逮捕直後に報道された情報がいつまでもネット上に残ることは、当人にとって不利益かもしれません。
しかし、報道によって公になった犯罪事実は社会の記録であり、個人の意見としてそれを語る自由まで制限されるべきではないと思います。

事件から一年も経たない時期のことでした。
当時はテレビやニュースサイトでも普通に名前が報じられていた状況です。
それを今になって「消してほしい」と言われるのは、都合の悪い事実を力で消そうとする行為のように思えました。

名誉毀損という言葉の使われ方

このような連絡では、「名誉毀損」や「法的措置を検討」という言葉がよく使われます。
しかし、名誉毀損が成立するのは虚偽の内容や悪意ある誹謗があった場合であり、報道事実をもとに意見を述べただけでは成立しにくいとされています。
真実性や公益性があれば、違法とはならないケースが多いです。

それでも一般人が法的措置という言葉を出されると、どうしても動揺してしまいます。
結果的に「余計なことは書かない方がいい」と考え、表現を控えてしまう。
この自己検閲こそが、相手の狙いなのかもしれません。

自分の思い通りにいかないと、威圧して従わせようとする。
その姿勢に、彼らが犯した行為と共通するものを感じました。

ブログ運営者として考えたこと

私は最終的に記事を削除していません。
報道された事実に基づき、自分の考えを述べただけだからです。
ただし、証拠としてメールの全文と送信情報はすべて保存しています。
本当に法的措置を取るつもりなら、正式な手続きを踏むはずだと思いました。(実際は来ませんでしたが)

この経験から学んだのは、削除要請の連絡というのは内容そのものよりも、心理的な圧力を目的として送られる場合があるということです。
そして、言葉のトーンが丁寧でも、その奥には支配や威圧の意思があるのだと感じました。

終わりに

社会は、更生や再出発の機会を否定してはいません。
しかし、犯罪の記録をなかったことにしようとするのは別問題です。
それをプライバシーや名誉毀損という言葉で正当化しようとする動きには、どうしても違和感があります。

報道は社会の記録であり、それをもとに感じたことを書くことも表現の自由の一部です。
その自由を、加害者本人の都合で奪われるような社会にはなってほしくないと思います。

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