氷の城壁を読んでいて、読み終わったあとも妙に引っかかり続ける人物がいます。物語全体としては、過去の出来事や家庭環境を背負いながら、不器用に人と向き合うキャラクターが多く描かれています。そのため、多少の失敗や衝突であれば受け止められる場面も少なくありません。
それでも、どうしても同じ目線で見られない存在がいます。熱川 真夏の言動には、読み進めるほど違和感が積み重なっていきました。感情的にぶつかってしまった結果というよりも、相手の立場や関係性を見極めたうえで行動しているように見える場面が多く、後味の悪さが残ります。
とくに中学時代の描写では、その違和感がはっきりと形になります。嫉妬や不満を抱くこと自体は珍しいことではありませんが、それがどのように表に出ているのか、その過程が強く印象に残ります。さらに物語が進むにつれ、その攻撃性が学校の外、家庭の中にも及んでいたことが示され、読み手の受け止め方はより複雑になっていきます。
氷の城壁 :熱川 真夏というキャラの位置付け
氷の城壁では、多くの登場人物が過去の出来事や家庭環境を抱えながら描かれています。誰か一人だけが明確な悪として切り離されことはほぼなく、それぞれの行動には背景が添えられています。そのため、メインキャラ同士でコミュニケーション上の失敗があっても、それぞれ根が良い性格なので大きなトラブルに発展することはありまsねん。
その中で、熱川 真夏は全く違う印象を残す存在です。彼女は物語の中心人物ではなく、中学時代の回想や周囲の証言を通じて描かれています。
学校内での振る舞いだけでなく、家庭内での態度も示されることで、彼女の立ち位置はより明確になります。他のキャラクターが内面の葛藤や変化を見せる一方で、真夏はずっと性格が悪いキャラクターとして回想に何度も登場していきます。
氷の城壁 :中学時代の小雪へのいじめ
中学時代、熱川 真夏と小雪は同じバスケ部に所属していました。部内には小雪と顔見知りの先輩が存在し、その関係性によって小雪は上級生から可愛がられる立場(男性部員のいじりは小雪にとってトラウマになるが)になります。この状況が、真夏にとって快くないものとして描かれていきます。

小雪は自分の立場が周囲に不快感を与えていることに気づき、上級生との間を取り持つ行動を取ります。その結果、真夏は上級生との関係において、小雪を介した形で立ち回るようになります。この時点では表立った衝突は描かれていませんが、関係性が小雪を中心に回っている構図が続いていきます。

上級生が卒業すると状況は一変します。小雪を通じた関係が成立しなくなったことで、真夏の態度は明確に変化します。以降、小雪に対して継続的ないじめが行われるようになり、その内容も強いものとして描かれています。この変化は突発的な出来事ではなく、段階を経て示されています。

いじめに気づいた小雪の親友である美姫が激しく抗議する場面も描かれます。美姫と真夏の関係が決定的に悪化する描写は、周囲から見ても行動が問題視されていたことを示す要素の一つです。これらの出来事は、小雪にとって五十嵐 翼との関係と並ぶ、大きなトラウマとして残ることになります。

氷の城壁:妹 秋音に向けられた攻撃性
熱川 真夏の攻撃的な態度は、学校内の人間関係に限られたものではありません。作中では、妹である秋音に対しても、強い言葉や否定的な態度が向けられていたことが示されています。これは回想や会話の中で断片的に描かれていますが、その内容は一貫しています。

秋音に対して向けられる言葉の多くは、容姿に関するものや、日常的な役割の押し付けです。嫌なことや面倒なことを妹に任せる構図が続いており、姉妹間の関係が対等ではないことが伝わってきます。こうした描写は、一度きりの出来事ではなく、継続的なものとして描かれています。

家庭という閉じた空間で繰り返される言動は、周囲の目が届きにくい点も特徴です。学校での振る舞いとは異なり、制止される存在がいない状況で、同じ傾向の行動が続いていることが示されています。この点が、読者にとって強い印象を残す要素となっています。
秋音側の反応や立場も含めて描かれることで、真夏の言動が一時的な感情の発露ではなく、日常の関係性として存在していたことが分かります。妹にここまで言われる姉ってなかなかいないです。

まとめ
氷の城壁における熱川 真夏は、物語の中心人物ではないものの、中学時代の回想や周囲との関係性を通じて、強い印象を残すキャラクターとして描かれています。小雪へのいじめは、単発の出来事ではなく、先輩との関係性や立場の変化と連動する形で描写されています。
また、攻撃性が学校内にとどまらず、妹である秋音にも向けられていた点は、真夏という人物像を考えるうえで重要な要素です。家庭という場面でも同様の態度が描かれることで、行動が限定的なものではなかったことが分かります。これらの描写は、周囲のキャラクターとの対比によって、より際立つ形になっています。

