雨夜の月3巻では、これまでの静かな関係の流れの中に、新しい人物や過去の出来事が重なるように描かれていました。特に高倉明の登場や、奏音の過去に関わる綾乃との会話は、物語にこれまでとは違う角度を与える場面として印象に残りました。
高倉明は、美容師として登場し、自身の高校時代の経験を咲希に話します。その内容が咲希の悩みと近い部分を持っていることが語られ、作中でも少し距離の近い会話が交わされていました。また、初登場の場面で咲希が奏音を見つける表情を見て、明が何かに気づいたように描かれる一コマもあり、後から読み返すとつながりが見えてくる構成になっています。
一方で、綾乃と咲希が偶然出会う場面では、綾乃の家庭の事情が短い会話の中で示され、奏音との過去の関係がどのように変化していったのかを考えるきっかけになりました。重い描写ではありませんが、言葉の内容から状況が想像できる場面でした。
また、咲希の中学時代の回想シーンもあり、友達から向けられた問いかけに咲希が動揺する様子が描かれています。短いシーンながら、当時どのような気持ちを抱えていたのかが断片的に示されていました。
咲希の理解者として登場した高倉明という存在
雨夜の月3巻で新しく登場する高倉明は、美容師として登場します。明がどんな人物なのか、最初の数コマでは多くが語られませんが、咲希や奏音と会話する中で、明の過去が少しずつ明らかになっていきます。
明は自分の高校時代の経験を、友達の話として咲希に伝えます。同性から告白されて付き合っていたこと、その相手がデートで女性らしい格好を求めてきたこと、自分に向けられていたのは恋愛感情ではなく役割への期待だったと気づいたこと――作中に描かれている内容はこの範囲です。説明は短いながら、複雑な問題がそのまま提示されている印象があります。
また、明の初登場時、咲希が奏音を見つけた際の表情を見て、明が何かに気づいたように描かれるコマがあります。この部分は作中の絵として明確に存在しますが、明が何をどう受け取ったのかについての説明はありません。後の会話で明が自分の経験を語る流れを見て、ここで気づいたのかとなりました。

改めて見たら同姓に向ける表情じゃないですよね。
明の登場は長いシーンではありませんが、具体的な体験談が語られることで、これまで曖昧に扱われていたテーマに別の角度から言葉が与えられる回になっていました。描かれた事実だけを見ると、咲希の置かれている状況と重なる部分を持つ人物が物語に加わったことで、3巻の中で特に印象に残るパートになっています。
奏音の過去へつながる綾乃との会話が示した家庭の事情
雨夜の月3巻では、奏音の中学時代に関わりのあった綾乃と咲希が偶然出会います。この場面で語られる内容は多くありませんが、綾乃の家庭環境に触れる部分が描かれており、作中で明確に示されているのは、綾乃が弟や妹の世話を日常的に行っていたこと、母親と暮らしていること、そして家のことで手いっぱいになりやすい状況にあったという点です。
作中の回想では、綾乃が一度家を出てしまった際に母親から言われた言葉が短く示されます。この子達の面倒を見なければいけないという内容で、具体的な説明はありませんが、綾乃が家庭の中で担っていた役割が重いものであったことが読み取れる描写になっています。また、その経験が、奏音と関係が変わっていくきっかけとして触れられています。

3巻の時点で詳しい経緯は明かされていませんが、綾乃が奏音と疎遠になったことを後悔しているような態度が描かれています。咲希と会話する中で、綾乃が過去の状況を整理しきれていない様子や、奏音との距離の変化に対して複雑な感情を抱えていることが、言葉の端々から分かる表現になっていました。
綾乃と奏音が再びどう関わっていくのかについては3巻では描かれていませんが、この短い会話に中学時代の出来事が重ねて示されたことで、綾乃の背景と奏音との関係が少しだけ立体的になった印象があります。
中学時代の咲希
雨夜の月3巻では、咲希の中学時代を描いた短い回想シーンが挟まれています。このシーンは数コマのみの簡潔な描写ですが、現在の咲希の心情とつながる要素として扱われています。作中で示されている内容は、咲希が友人からもしかしてという言葉を向けられ、咲希本人が明らかに動揺した表情を見せる、というものです。

友人が何を意図してその言葉を口にしたのか、また咲希がどう解釈したのかについては説明されていません。ただ、からかうような言い回しであったことと、咲希の表情がはっきり変わったことが描かれています。この描写によって、咲希がその時点では自分の気持ちをうまく扱えず、反応に戸惑いがあったことが読み取れます。
短いながら、咲希が過去に抱えた迷いが現在にも影響していることを示す役割を持ったシーンでした。
3巻の範囲では、この回想がどの程度深い意味を持つかまでは描かれていませんが、咲希の心情を理解するための補助的な描写として印象に残る部分になっていました。
まとめ
雨夜の月3巻では、これまでの関係性に新しい人物や過去の出来事が重なり、物語の幅が静かに広がっていく様子が描かれていました。高倉明の登場は、咲希のこれまで語られてきた心情と重なる部分を持つ体験談が提示される場面として扱われ、物語の中で印象に残る存在になっていました。長い描写ではありませんが、具体的な経験が語られることで、これまで触れられてきたテーマと並列に置かれる構成が印象的でした。
また、綾乃との会話では、短い言葉のやり取りの中に家庭環境が示され、奏音との関係が変化した背景が少しだけ見えるような描写がありました。綾乃が過去をどう捉えているのか、現在どのような気持ちを抱えているのかについて明確な説明はありませんが、言葉選びや態度から、関係に揺れがあったことが分かる場面となっていました。
さらに、中学時代の咲希の回想は、数コマという短い描写ながらも、当時の咲希がどのように反応していたのかをはっきりと示すシーンになっていました。友人の言葉に動揺する咲希の表情は、現在の心情の描写と並べて読むことで、彼女にとって過去の出来事がどの程度の重さを持っていたのかをうかがわせる位置づけになっています。

